Chill MUSICA

Chill MUSICA / うた / オルビレイの歌

オルビレイの歌

だいどころの窓に 薄い金色(きんいろ)が揺れて あなたの指先 湯気を撫でていた 呼びかける前に 風が先に答えて 声より静かな 頷きが落ちた
箸置きの影に 昔の午後が眠り 茶碗の縁(ふち)から 季節だけが零(こぼ)れる 名前を言わないまま 笑ってくれた日 わたしの中だけで いまも在(あ)る
音のない会話を 秋の隙間で繋ぐ 呼ばれない祈りほど 近くまで来る 触れられず 離れず ちょうどいい光で
オルビレイ 窓辺の風 誰のものでもない あたたかさ 忘れることの外側で あなたは まだ ここにいる
オルビレイ 指のぬくもり ことばの形を持たないまま わたしは今日も 確かめてる 静かな頷きを
棚の奥 ラベルの剥がれた瓶 薄い蜜 記憶はいつも 音じゃなくて 香(か)で満ち 輪郭のないまま 息だけが生き延びる 失(う)せた名の代わりに 気配だけが続く
赤い椅子 窓の塵(ちり) 陽の角度で分かる “ここに居た”という事実だけが軸 問いを口にすると 秋は少し遠のく 黙っていることだけが 正しい合図(サイン)だと知る
ポラリヤの夜 方角はもう要らない 帰る場所は地図じゃない 手の温度で足りる ほどけるように 結ばれる 静かな往復 呼ばれない名に そっと 返事をする
落葉(おちば)の音より小さく それでも確かな合図 離れたままの近さで 同じ湯気を吸い込む
オルビレイ 窓辺の風 誰のものでもない あたたかさ 忘れることの外側で あなたは まだ ここにいる
オルビレイ 指のぬくもり ことばの形を持たないまま わたしは今日も 確かめてる 静かな頷きを
ミナトスの鐘が 胸の底で鳴って グラヴィナの種が 息の奥で芽吹く 名札のない花ほど 長く香るから 呼ばないままで そばにいる
オルビレイ 窓辺の風 誰のものでもない あたたかさ 忘れることの外側で あなたは まだ ここにいる
オルビレイ 指のぬくもり ことばの形を持たないまま わたしは今日も 確かめてる 静かな頷きを
呼ばれない名に やわらかく頷く 秋が終わっても この光は 残る