Chill MUSICA

Chill MUSICA / うた / つけっぱなし

つけっぱなし

つけっぱなしの画面が 部屋を青く染めてる ガソリンの数字がまた 知らん顔で跳ねてる レシートが伸びていく 春のくせに財布が痩せる おにぎりをひとつ減らして 帳尻だけ合わせる 誰かが遠くで何か燃やすたびに ぼくの暮らしの輪郭が また少し細くなる コンビニの画面に映る 色のない煙 「温めますか」 頷いて 目をそらす ルーティン 細い水の道を 大きな影が渡る あの影の中に ぼくの明日が詰まってる 蛍光灯の下 プラスチックの蓋を開ける 世界の裏側と ぼくの昼飯が繋がってる 地図帳の折り目あたり 誰も読めない文字の街 そこにも自販機あるのか 夜中にあたたかいを押す誰か 届くはずの荷が届かない 道が影で塞がれてる はるかいにしえより続く海の道が 息を止めてる
つけっぱなしの明かりの下で ぼくらは知らないふりをしている 遠い海の値段を 毎日払いながら それを値段とも思わずに
スイッチひとつで明かりがつく 蛇口をひねれば湯が出る その裏側を知っている 知っていて 目を閉じる それがぼくの作法 テレビを消した 部屋が暗い 冷蔵庫の唸りだけが鳴る ああ これも電気だ 断てない あの細い海から来た血が 壁の中を走ってる 朝が来て コートを着て イヤホンで世界を塞いで歩く 知らないふりの練度だけが 上がっていく春 改札を抜ける 今日もうまく目を伏せた でも風が止まる瞬間がある イヤホンの隙間から漏れてくる ぼくが使い残した明かりの先で 誰かが暗闇を数えてる 指を折って数えてる
つけっぱなしの世界の中で ぼくらは止められないふりをしている 細い海の向こうの空が 今日も誰かの朝を奪っている
つけっぱなしの明かりを 消す勇気もないまま ぼくはぼくの値段を生きる 恥と呼ぶのか 日常と呼ぶのか ……まだ 点いている
ハレとケロケロ ハレとケロケロ